連載「野球の国から」では、さまざまな形でキャンプの生をお届けする。初回に登場するのは、日刊スポーツ評論家の森本稀哲氏(41)。かつての盟友、日本ハム新庄監督が迎える初の春季キャンプから。

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BIGBOSS流キャンプをチェックするため、私もキャンプ初日は“BOSS組”の国頭へ向かった。目に留まったのは、新庄監督が居ても立ってもいられなくて自分から教えてしまうところ。午前中の走塁練習では担当コーチの話の途中でも割って入り、身ぶり手ぶりの指導を行っていた。選手たちの動きを見ていて思うところがあったのだろう。ウズウズした気持ちがあふれ出ていた。全体練習の中では、監督はコーチに指導を任せるケースがほとんどだが、新庄監督は今後もどんどん選手へ言っていくのではないだろうか。

私も現役時代に新庄監督からアドバイスをもらってプレーが改善できた経験がある。外野守備でのクッション処理だ。左翼を守っていた04年の私は、打球が外野フェンスを跳ね返った時にグラブを出してボールを捕ってから送球体勢に移っていた。そのシーズンの補殺は0個。送球動作までに無駄があり、フェンス直撃の打球で二塁打を阻止することはできていなかった。

翌年の05年にアドバイスをお願いすると、端的に改善点を教えて頂くことができた。「もっとリラックスして、素手でボールを捕ったら早く投げられるから」。この日の走塁練習中の三塁からのタッチアップ時の姿勢も、力を抜いてリラックスすることを求めていたが、自分はあの一言で、ガラリとプレーの質も結果も向上した。無駄な力を省き、グラブを差し出してボールを捕りにいくのではなく、フェンスから跳ね返る力を利用して投げる右手でキャッチすれば、早く送球動作へ移ることが可能となった。

05年は6補殺を記録し、さらに06年は9補殺を記録してゴールデングラブ賞も初受賞できた。当時は自分から聞いた時にだけ、アドバイスをもらえていた。日頃から感じていることをポーンと言ってもらったり、分からないことについては「見ておくわ」と後日に助言をもらったり。なので、この日の自ら教えに行く姿は、少し新鮮でもあったが、新庄監督の1つ1つの言葉は、選手を大きく成長させる可能性を秘めている。

何より、キャンプ初日から選手に緊張感が垣間見られた。今回は名護組をBIG組、国頭組をBOSS組と呼んで1、2軍の分け隔てをしない方針だが、改めて若手が多いBOSS組の選手も、新庄監督の言葉の意図が感じられたのではないだろうか。自分たちは2軍選手ではなく、ファイターズの一員であると自覚してくれれば、BIGBOSSチルドレンもどんどん台頭してくるだろう。(日刊スポーツ評論家)

ブルペンで投手陣に声をかける新庄監督(右)(撮影・河野匠)
ブルペンで投手陣に声をかける新庄監督(右)(撮影・河野匠)
上野に指導する日本ハム新庄監督(撮影・黒川智章)
上野に指導する日本ハム新庄監督(撮影・黒川智章)
取材に訪れた森本氏(右)に声をかける日本ハム新庄監督(撮影・河野匠)
取材に訪れた森本氏(右)に声をかける日本ハム新庄監督(撮影・河野匠)