日本ハムからポスティング制度を利用して米移籍を目指してきた上沢直之投手(29)が、レイズとマイナー契約で合意した。交渉期限の11日午後5時(日本時間12日午前7時)を過ぎた後、球団が正式に発表した。春季キャンプには招待選手として参加。メジャー昇格を目指すことになった。剛腕グラスノーをドジャースへ放出するなど先発再編を目指すレ軍にとって、経験豊富な上沢は期待度十分。開幕ローテに入る可能性も高そうだ。

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1学年下で日本ハム時代の同僚、大谷の巨額契約には程遠くとも、上沢のメジャーへ挑む心意気は不変だった。形式上はマイナー契約となったが、上沢に対するレ軍の評価は先発ローテの一角とほぼ同等に近いに違いない。早い時期から上沢に興味を示し、昨年中にオンライン交渉を終えたレ軍は、期限を目前に「合意」を最優先する形で着地したものとみられる。

実際、レ軍はマイナー契約の選手としては、異例ともいえる上沢のコメントを発表した。「レイズの組織に加わることに興奮しています。MLBでのキャリアを始める機会を頂き、感謝しています。レイズでプレーすることを決めたのは、球団が投手育成に関して素晴らしい成功をおさめてきたことに魅力を感じてきたからです」。特AレベルのFA選手かのような丁寧なお披露目だった。

メジャー最激戦区のア・リーグ東地区で過去5年連続プレーオフへ進出してきたレ軍にとって、先発投手陣の強化は急務だった。昨季前半戦で11勝を挙げたエース左腕マクラナハンがトミー・ジョン手術を受けて途中離脱し、復帰時期も未定。今オフには、今後、高額契約が見込まれる剛腕グラスノーをドジャースへトレードで放出するなど、先発陣再編成の途上だった。

現時点では、通算52勝のエフリン、同31勝のシバーレが確定しているものの、3番手以降は流動的。昨季、パ・リーグでは山本由伸(ドジャース)を上回る170回を投げるなど、過去3年連続で投球回数150回をクリアした「イニング・イーター」の上沢は、理想的なピースだった。開幕ロースターに入った時点でメジャー契約に切り替わる「スプリット契約」が濃厚で、先発試合数、投球回数ごとに、インセンティブ(出来高払い)などが付帯する契約となっている可能性が高い。

昨年10月28日、米移籍を志す会見の席上、上沢は明確な言葉で素直な心中を明かした。「翔平と対戦することがあったらすごく興奮すると思う」。条件面を度外視しても、スタート地点に立つことが第1歩。上沢の気概こそ、野球選手の原点なのかもしれない。