熱戦が繰り広げられている第105回全国高校野球選手権記念大会では、カラフルなユニホームをまとったチームが目立つ。SNS(ネット交流サービス)でも「個性的」「目立っている」などと話題になった。高校野球のユニホームにも「多様化」「個性化」の波が押し寄せている。
大リーグのデザインを参考に
春夏通じて甲子園初出場の浜松開誠館(静岡)のユニホームは、上下がチャコールグレーで、アンダーシャツとソックスは赤と個性的だ。胸にある「Kaiseikan」のポップな赤いロゴも目を引く。SNSでは「インパクトがある」「大リーグの球団みたい」などの投稿が見られた。
高校野球は白や淡いグレーの地に、黒っぽい文字を使ったシンプルなユニホームが多いが、プロ野球・中日でプレーした浜松開誠館の佐野心監督は米大リーグのダイヤモンドバックスを参考に決めた。「選手にはかっこいいユニホームでプレーしてほしい。単純にそれだけ。色のバランスがいい」
選手たちは入学前後に戸惑うことはあったが、今は愛着を持つ。深谷哲平選手(3年)は「他校より目立つ。派手でいいと思う。注目されると燃える」と、気持ちが高まるという。
今夏の静岡大会で優勝後、佐野監督から白を基調としたユニホームに替えることも提案されたが、選手が全員一致で反対した。吉松礼翔主将(3年)は「もっと個性的なユニホームが広がってもいいと思う」と話す。
赤色は「目的が明確になる」
北陸(福井)は2020年春から、かつてのプロ野球・阪急ブレーブス(現オリックス)を意識したデザインに変えた。白地にアンダーシャツなどが赤色で、今夏の甲子園は初戦で敗れたものの、春夏連続出場を果たして話題を集めた。
初出場勝利を果たした高知中央は、赤いストライプと左胸の「KC」の赤いロゴが特徴的だった。SNSでは「珍しい」「胸のKCは斬新」などの投稿があった。おかやま山陽(岡山)も白地に赤字で強調された胸の「SANYO」の文字が映えていた。
色彩心理学者で「色彩自然学の学校」代表の高橋水木さんは、カラフルなユニホームが増えている背景について、「SDGs(持続可能な開発目標)やジェンダー問題を訴えるロゴも色鮮やか。社会的にも個人的にも多様性を大切にする流れがある」と分析する。
浜松開誠館、北陸、高知中央、おかやま山陽はいずれも赤色が入っていた。高橋さんは赤色が目立つことについて、「自然界で赤色は果実が実るなど成熟の色。形がはっきりする、目的が明確になる、という色であり、まとまりを持って勝利を目指すチームが赤を選択することはありえると思う」との見方を示す。
プロ野球・ヤクルトなどのユニホームを手がけた、ユニホームデザインの第一人者である大岩Larry正志さんは「(カラフルにできる)技術の発達がある。甲子園には出ていないが、紫一色の学校もあった。ルールにのっとって何でもできるとなれば、他校と違うものを選ぼうということもある」と指摘する。
今夏の静岡大会ではオイスカ浜松国際が紫のユニホームで異彩を放っていた。大岩さんは「4000近い高校の野球部があるのだから、いろいろな野球との接し方があっていい」と語る。
高校野球のユニホームは、シャツとパンツが同一カラーでなければならないというルールがある。プロ野球のように、例えばシャツが赤色、パンツは白色というツートンカラーは禁止だ。そうしたルールを踏まえながら、時代とともに高校野球のユニホームも「多様化」「個性化」が進む可能性がある。【吉見裕都】
「多様化」「個性化」が進む高校野球のユニホーム 夏の甲子園 - 毎日新聞
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