4日に組み合わせ抽選会が行われるセンバツは、昨秋東海大会準優勝の聖隷クリストファー(静岡)が選外になり、そこに端を発した騒動が注目された。

まず押さえておきたいことがある。物議を醸した選考はあったが、選んだ側の大人の思惑は、選ばれた高校生とは無関係。ここだけは、高校野球ファンの皆さんはしっかり踏まえ、ぜひ球児には声援を送ってほしい。私はこの件について、主にYouTube「里崎チャンネル」で見解を示し、改善策を提示した。こんなつらい思いを2度としてもらいたくないとの一心からだった。

私がもっとも危惧することを示しておく。世の中には聖隷クリストファーへの同情が多くある。そして、同情の反動はゆがんだ形で大垣日大に向けられはしないか。心配だ。

大垣日大が全力で勝ち進むことを願っているが、そうならなかった時、この件に不満を抱える高校野球ファンの声が、いっせいに大垣日大に向けられてはいけない。ここは声を大にして抑えたい。恐れているのは「反動」。大垣日大を「個人の力量で勝る」として逆転で選出しながら、早い段階で敗退すれば、今回の選考が間違っていたと指摘する声が飛び交いそうだ。ゆえに、先にくぎを刺しておきたい。

この騒動で図らずも生じた重圧に、大垣日大の選手、監督がさらされるのは容易に想像できる。皆さんも、大垣日大の選手の側になったと仮定して考えてみてほしい。こんな状況下では、初戦敗退は絶対できないと、いらぬ重圧に追い詰められても不思議はない。

大垣日大を取り巻く環境は非常に厳しく、試合に臨む選手の心理状態は大いに心配なところ。先の結果など何も気にせず、他校とまったく同じ条件で練習、初戦に集中してほしい。その環境づくりは、周囲の大人が整えなければならない。

日本ではスポーツのこうした騒動の際、選ばれた側の結果を待ってから批判する風潮を否定できない。1992年のバルセロナ五輪女子マラソンでは、最後の1枠をめぐり、松野明美さんと有森裕子さんが激しく競った。仮にあの時、有森さんがメダルを逃していたら、どんな批判にさらされていたかと思うと、レース前の有森さんの心境は想像すらできない。

私は聖隷クリストファーの特別枠での出場を真剣に考えていたが、もう抽選日となり、議論する時間は残されていない。今後、こうしたケースでの特別枠導入は、再発防止の観点からも必要と感じ、機会があればまた提案したい。大垣日大には、結果がどうあれ、全力で戦ってほしい。全国の高校野球ファンもフェアに評価し、ねぎらいの拍手を送ってほしい。(日刊スポーツ評論家)

1月28日、選抜大会出場を決め、喜ぶ大垣日大ナイン(朝日新聞)
1月28日、選抜大会出場を決め、喜ぶ大垣日大ナイン(朝日新聞)
聖隷クリストファー上村校長兼監督(右端手前)からセンバツ落選を伝えられる選手ら(2022年1月28日撮影)
聖隷クリストファー上村校長兼監督(右端手前)からセンバツ落選を伝えられる選手ら(2022年1月28日撮影)