ドラマ「スクール☆ウォーズ」を地で行く劇的勝利だった。和歌山東硬式野球部特別後援会の西山義美会長(65)は「まさか、校歌を聞けるとは思わなかったです」と感無量だった。

野球部が軟式から硬式に移行したのは2010年。周囲の大半から反対されたが、約5年かけて創部に尽力したのが、PTA会長だった西山氏だった。

「大きな大会もあるし、学校が応援で一体となれます。軟式は草野球のレベルにもいかない。週に1、2回の練習でね。何とか硬式を、という思いでした。ただ、甲子園が目標という感じではありませんでした」

当時は40人クラスで、授業の出席者がわずか3人の日もあったという。生徒もさまざまな事情を抱え、指導は難しかった。

10年、草だらけのグラウンドに赴任してきたのが米原寿秀監督(47)だった。就任当初、選手たちに弁当箱をプレゼント。ある日、中身を見て驚いた。ポテトチップスだけ入っていた。体作りをうながす教育の一環だったが、受け取る側の意識はまだそこまで高くはなかった。「最初は大変でした」と指揮官。20人いた部員は4人に減った。冬の時代を越え、今がある。今大会直前の練習試合で昨夏の全国王者、智弁和歌山に完封勝ちした。いまや、チームのモットーは「魂の野球」だ。雑草軍団はたくましくなった。【酒井俊作】

◆1人4役 和歌山東・麻田が4つの守備位置についた。過去のセンバツでは85年桑田真澄(PL学園)の投手→左翼→一塁、06年前田健太(同)の投手→左翼→中堅など3ポジションが最多で多数あり、4つは初めて。夏の大会では19年に元謙太(中京学院大中京)が東海大相模戦で左翼→右翼→投手→左翼→一塁と動いた例などがある。

◆延長史上最多得点 和歌山東が延長11回表に7得点。延長イニングでは春夏の大会を通じ1イニング最多得点となった。これまでは春夏ともに6点が最多で、春は80年秋田商が2回戦の静岡戦で10回表に6点を挙げている。夏は61年に報徳学園と倉敷工が11回に6点ずつを取り合った例などがある。